Little AngelPretty devil 〜ルイヒル年の差パラレル・番外編

   仔ギツネ、こんこんvv
 



 当世の日之本・大和の国の丁度真ん中、へそに当たる位置取りのせいか。京の都には四季の趣きもどれかへ大きく偏ることなく均等に訪れる。随分と高くなった秋空の下、明るく乾いた陽光の大向こうを望めば、何の気なしに見やった山の頂きなんぞが、そろそろ秋の錦の彩りを準備し始めている頃合いとなって。

  「…おや。」

 こちらはまだまだ夏の名残りの青さを何とか残したまんまの、草がぼうぼうと生い茂る庭先を、ひょいと見やった当家の若主人。そこへ何をか見つけたらしく、ついのこととて“くすん”と小さく笑って見せると、
「くう。」
 そこにおるのだろう?という呼びかけへ、わさわさ、芒種の草が揺れ始め。ひょこりとお顔を出したるは。真ん丸なお顔に真ん丸な頭。甘い色合いの柔らかそうな髪を、お馬の尻尾みたいに頭の後ろへ結い上げた、それは小さな和子であり。3つか4つか、そのくらい、まだまだ親御の手元から離れて遊ぶは早い年頃。なのに、こんなに遠くまで、独りでとてとて来たらしく。秋向けの色襲
かさねで揃えた小袖に袷あわせ、袴といった装束の拵えも一丁前なのがまた愛らしい。
「どした。葉柱なら昨夜は来なんだぞ?」
 よって、今も此処にはおらぬがと。濡れ縁へと中腰になり、関節の必要がないほど短い手足を振り回すようにして、とてちて駆け寄って来た和子へと声をかけたるは。この屋敷の主人にして、二十代になるかならぬかという若輩でありながら、大内裏にては神祗官補佐という上級職に就いてもいる、蛭魔という陰陽師。仰々しい肩書を頂いた切っ掛けこそ、今帝からの推挙という…物によっては鶴の一声、実力は後回しかもという、いささか胡亂な形であったものの。その実績は、知る人ぞ知る、知らない人にはとことん不明という曖昧さながら、それでも破格の咒力を誇っており。月の光を集めたような、金の髪に金茶の双眸。この時代にはあってはならぬ、いかにも妖しきその風貌さえ、途轍もない術を唱えたその余波だろうと、却って威風の足しになっているほどだとか。こんな奇矯な術師を宮中に留め置くほどにも、今帝の御権威の霊験あらたかに。そんなものが暴れる筈がない…というのを建前とし、公にはされない邪妖や魔物、悪霊の闊歩へと乗り出しては、跡形もなく封印滅殺するのが彼の仕事ぞと、暗黙の了解の下、なって久しい幾歳月。人付き合いを面倒がっての、奔放気まま。出仕さえ怠りがちな不精者だってのに、それでも…人が寄れば、気心が知れれば、色々とあったりなかったりも積み重なって。気がつけば結構あれこれと、知己だの縁者だのが、人や人外 引っくるめ、一抱えほど出来てた彼であったりし。こちらから口へと上らせた、葉柱というのそんな知己の一人…いやさ、一柱であったりし。なりこそ屈強精悍な武人風の青年なれど、夜陰を住処
すみかに永遠を生きる陰体の一門、蜥蜴の邪妖らの総帥。この和子はそんな彼が手元で世話を焼いているというキツネの仔。ただし、こんな姿への変化へんげも出来る、どうやら妖狐の仔であるようで、
「ととさま、これって。」
 その葉柱からの言伝てでも持って来たものか。自分の顎ほども段差の高い縁側へまで届けとばかり、うんうんと寸の短い腕を伸ばして来た。どーれと坊やごと上へと掬い上げてやり、
「文か?」
 鼻先へ どーじょと差し出されてた平たい包み、あらためて白い手で受け取れば。昨夜からかかってた野暮用が長引いてのこと、今日はちっと遅れるとの、短い便りがしたためてあり。
“わざわざこの坊主を寄越したってことは…。”
 蜥蜴の一門、小さいのも揃っての、何やら会合でも集会でもやらかしているものか。総帥格の葉柱ほどならいざ知らず、小者ではこっちのチビさんの餌にだってなりかねない関係だし。魚しか与えておらなんだということで、この子自身は蟲には見向きもしないにしても。そういう種族の醸す気配、肝の小さな者らには、やはり心地のよかろうものではなかろうからと。その間、預かっててくださいませと、暗に頼まれているということが伺えて、
「気苦労が絶えねぇ奴だよな、まったくよ。」
 それを言ったら…総帥格だってのに顎で使われてるわ、何かにつけて足蹴にされるわ、そんな主従関係を結ばされたとなっている、あなたとの盟約の方がよっぽどに。相当な気苦労として数えていいものである筈ですが。
(苦笑) まま、そっちはね。そういう方向で切って捌ける種のそれでは、なくなって久しい間柄でもありましょうから。ご本人に聞いたとて、何の話だと真顔で聞き返されかねませんけれど。
「おやかま様、読んだ?」
「おう。読んだ読んだ。」
 見かけは一応“幼児”だが、保護者から聞いた通りを攫えば…この春に生まれたばかりらしい乳児に近く。ここに出入りするようになったのだって、まだまだ日も浅いというのにね。もう、蛭魔の呼び方、覚えたらしくて。ただ、
「おやかま様はなかろうよ。」
 何だか釜の親方みてぇだと苦笑をし、
「お館様、だ。」
「おやかまさま。」
「…じゃあ、お師匠様の方はどうだ?」
「お、おしょしょ、おしょしょーさま。」
 まだまだ舌が回り切らぬか、とんだ言いようを紡いでくれて。
“ま・いっか。”
 別に名前になんぞ、こだわっても詮無いしのと。そんな小さな来訪者へ、お使いご苦労と苦笑ってやっておったれば、
「あっ、くうちゃんだvv
 そろそろ朝のお勉強の時間だからと、庫裏のある方からやって来ていた書生の坊や。小さなお馴染みさんの姿へと、軽やかな声を上げたので、
「後は頼む。」
 子供は子供同士…というのではないが、狐の姿で駆けて来てのこと、汚れていた手やら足やら、水で洗って拭いてやれと目顔で示せば、心得ましたと笑顔のお返事。廻り回廊の隅、御手洗の石鉢からの水をヒシャクに掬い上げて戻ってくる。陽当たりのいい場所なので、井戸水よりは冷たくなかろうとの配慮であり、
「お家は遠いんでしょうに走って来たんだ、凄いねぇ。」
 縁側の縁に座らせた和子の小さい手やあんよへ順々にかけてやり、手ぬぐいで拭って はい綺麗。よっぽど気持ちがよかったか、小さなお背
せなに沿うようにふわりと立った毛並みのいいお尻尾も、ハタハタと揺れて躍って何とも愛らしく。
「せ〜な、せ〜なvv
 遊ぼうというお誘いか、舌っ足らずなお声で愛らしく呼ばれては、悪い心地がする筈もなく。これまではこのお屋敷で一番のおちびさんだったセナくん、お兄さん気分で“それじゃあね”と向かい合う。小さなお手々を握って軽く上下させ、ところどころでペチペチと、自分の手のひらを相手の手のひらと打ち合わせる、歌に載せての簡単な手遊びを教え始めた彼であり、

  “とんだ育児所だの。”

 しかも、片やはこの幼さで人への変化がこなせるほどの霊力を帯びたる、いづれの血統だか由緒ありげな邪妖の仔ギツネで。もう片やは…経験と知識が及ばないだけの、見習いながらも蛭魔に劣らぬ咒力の持ち主、怒らせるとそれはおっかない鬼の眷属、武神様が現れる童子だと来ては。せっせっせ〜♪などと呑気に手遊びしている姿と裏腹、箍が外れたら何が起きるか、こんな恐ろしい和子らもいないという組み合わせであり、
“まあ、本人たちには何の罪も科もないからの。”
 平和には違いないわなと、金色がかった秋の陽の中、目許を細めたお館様であったのだけれど。

  「?」

 ふと。何にか気づいたような素振りで中空を見上げた仔ギツネくん。数え歌の途中だったことから、
「どしたの?」
 手が止まったことへと気づいたセナが、声をかけても振り向かず。小さな顎先、ちょこりと上げて、何もない虚空をじ〜〜〜っと見つめていた小さな彼であり。
「………。」
 その虚空へと向けて小さな手を伸ばすと、今度は“えいえいっ”と何かしらを掴もうとする仕草を見せる。
「??? くうちゃん?」
 光線の加減でか自分には何にも見えないけれど。小さな虫か何か、間近にぶんぶんと飛んででもいるのかな? それを掻き取ろうとしているのかしら。そんな風に思ってのこと、セナのみならず、少し離れた位置にいた蛭魔もまた、気づきはしたが手出しもしないままで見守っていれば、

  「や。」

 短く、されど一丁前に気合いを掛けつつ、何をか掴んだような所作をして。その両手をぐいっと引いて見せた…その途端、
「わっ。」
 やはりそこには何もなかったし、これでも一応は陰陽師としての修養中のセナが、そして少し離れていたとはいえ、同じ空間内には蛭魔まで、顔を揃えていたのだのにね。双方ともに何の気配も感じなかった、そんな中空から、突然現れた存在があって。
“…え?”
 しかもしかも。いかにも不意を突かれての無理強いによる出現。肩からどさぁっと、ややもすると無様にも。広間の板張りの上、まさに転がり出て来たその人は、セナには重々覚えのある相手だったもんだからビックリしたのなんのって。

  「………進さん?」

 そう。セナくんの守護として、彼の身を守るべく憑いてる武神様。体格も素晴らしければ、冷静沈着な気性と、一瞥だけで大概の使い魔を平伏させしむる重厚な豪胆さとを持ち合わせる、それは頼もしい守護神であるはずだってのに。あっさりこんと、こんな小さな坊やによって、引っ張り出されていたりして。

   《 ???》

 選りにも選ってご本人にも、何が起きたかが判ってないらしく。今日のお召しは浅い生成りの直垂に袴という略装の御仁が、尻餅に近い格好のまんま、きょとりと眸を見張ってしまっており。
「…これはまた。厄介なところが“手付かず”であったらしいの。」
 何とはなくながら事情が判ったらしい蛭魔が、少々呆れての一言を紡いで。何か起きねば日を送れない、相変わらずなお屋敷であるようでございます。





            ◇



「何て言えばいいものか。」
 その風貌の威容も凛々しき、それは頼もしい武神様であるはずが、ちんまり小さな仔ギツネの邪妖くんに、易々と居場所を察知され、しかも引き摺り出されるとはなと。その事実へこそ苦笑を禁じ得ないらしい蛭魔殿。何でまたそんな尋常ではない事態が繰り広げられたかの方へも、実は理解が至っているらしく。
「こやつらは、何も…単純に姿を透明にして、そこいらで息を潜めてって格好で、忍んでいるのではないからの。」
 進の側の事情というか、その有り様というものも自分たちとは根本的に違うので。小さな坊やにあっさり見つかりの、引っ張り出されのしたからといって、なんて未熟ものだという解釈にはならなくて。
「こいつがどういう有り様なのか、俺にしたって正確には知らねぇが。例えば、その身を気配という空気のような、そうさの、早瀬の飛沫よりも細かい、漠然とした存在へと変換して、広い範囲に拡散して“居る”って場合だってあるからの。」
 つか、俺らの前では便宜上“人の姿”になってるだけで、本来の姿の方こそ、水蒸気みたいな存在だったりするのかも知れんのだし。
「くうが人の子供の格好に“化けて”いるのと、理屈は一緒だ。」
「いっちょvv
 お館様の口調を真似つつ、にこにこと笑ってる坊やには、悪気なんて欠片ほどもなかったに違いなく。
「くうはよほどに感受性の高い妖狐であるらしいから。それで、気配の濃度の高いところを嗅ぎ当てたのみならず、遊んでほしかったのか、出て来なさいよと手のひらへ存在をもっと集めて、形に丸めて引っ張り出せた、というところなのだろな。」
 一体何事かと驚いていたものが、一転してこれって由々しき事態かもとお顔を引き締めていたのにね。途中からはお口を薄く開いて。呆気にとられてつつ説明を聞いているセナの少し向背にて。片膝ついての“控えおります”の姿勢を取っている武神様の傍ら、小さな坊やが駆け寄ると“ねえねえ”と相手の大きな肩を、やはり恐れることもないままに揺すぶっており。
「トカゲ野郎に懐いたのが一種の刷り込みになってて、ああいうデカブツは無条件で好きなのかもしんねぇな、あいつ。」
「…そういうものなんですか?」
 そりゃあ進さんは、威嚇的で恐持てのする、いかにも恐ろしい存在ではありませんし。小さきものには優しくて、懐ろ深い、よく出来た方ですけれど ////////…と。聞いてないことまで惚気始めた書生くんだってのは置いといて。
(苦笑)
「誰彼構わずで懐くのは、ちょいと注意しとかねぇと危ねぇかな。」
 そんな風に独りごちたお館様、
「くう、こっち来な。」
 進への助け舟も兼ねてか、しきりと遊ぼうと懐いていた坊やを手元へ呼んだ。なぁにと とてちて、広間を駆けてきた小さな和子へ、もっとお寄りと手招きをし、
「いいか? 彼奴は、セナちびの憑神だ。」
「ちゅきがみ?」
「ああ。」
 小さなお尻を、こちらは胡座をかいたお膝へと乗っけてやっての差し向かい。目線だけで進の方を示してそれから、
「どうやらお前は、陰体の気配を片っ端から察知出来る身であるらしいがの。だからって、どれでも彼でも、問答無用で触ったり引っ張ってみたりなんぞ、してはいかんのだ。」
「いかんの?」
 理解が及ばずの“な〜ぜ?”ということか。大きなお眸々をぱちくり瞬かせ、屈託なく小首を傾げる仔狐さんへ、
「あいつはそういった手合いではないが、中には容赦なく牙をむく、気の荒いのもたんとおるからだ。」
 やっぱりな〜、選りにも選って、そんな基本の基本が入ってなかったか、この坊主には、と。胸中にてこっそりと溜息をつきつつ、さらに言葉を続ける蛭魔であり。
「姿を見せずに息をひそめているのは、獲物を狙ってのこと。お前のようなやわやわな和子を食ってやろうと狙ってる輩だって、潜んでおる側にこそ多いからの。」
 わざとに睨むように目許を眇め、低い声にて言い立ててやると。そこは素直に脅されてか、
「〜〜〜〜、こあい〜〜〜。」
 ただでさえ高めの声を引っ繰り返し、大きな瞳をうっくと潤ませ、口元をうにうにと歪め始める坊やだったりし。効果は覿面だったらしいとの満足を覚えつつ、
「だから。よしか? あれれと何かに気がついても、それが親しい相手でないならば、挨拶なしにあんなことをしちゃあいかん。」
 表を出歩く身ともなれば、まずはと携帯せしむる必要のあろう警戒と礼儀。その双方からの、それこそ基本の基本。暗黙の了解の内の、大事な大事な決まりごとだってのに。まるで頓着のないままにいたらしき坊やであり、
「あやつだとて、お前があまりに小さいものだったから、抵抗もなく引っ張られてくれおったがの。」
 害意あっての悪さだの、誰ぞに命じられてのちょっかいだのなら、彼とても容赦はしなかろうから。
「それこそ言い訳の暇も与えずに、この俺だとて敵わぬ豪力繰り出して。礫に埋まるか、突風に攫われて地面へ叩きつけられるか。そんな仕置きをされてるトコだろからの。」
 痛いと叫ぶ暇もないぞと、またぞろ怖いお顔で吹き込む蛭魔だったりしたのへは、さすがに聞き捨てなかったか、
「いくら進さんでもお館様にそこまではしませんよう。」
 憤然と口を挟んで来たセナくんだったりしたのだけれど。

  《 …………。》
  「せなちび、それだと順番がおかしくないか?」

 そうですよね。正確には、いくら蛭魔が度の過ぎた揶揄を放ったとて、そこまでするような進さんではないと。日頃の普段のデフォとしてひどい側へとつく“いくら”の位置が、微妙にあべこべだったような…。
「あやや。////////
 要勉強な書生さんを宥めるのは当の憑神様にお任せするとして、うゆうゆ、目許をまたぞろ潤ませている仔狐くんへ、
「よしか? お前は殊に感受性が鋭い子であるらしいから。好奇心がうずうずしても、余計に注意して、余計なものへと手を出さぬようにな?」
「あいでしゅ。」
 お鼻が詰まったような声でのお返事へ、もう泣くなと、ゆっくりゆさゆさ揺さぶってやっていると、

  「泣かせた本人が言ってもなぁ。」

 呆れたようなお声が挟まって。ここに最初からは居なかった者の、深くて響きのいいお声。おお、やっとのお目見えかと、蛭魔が声を掛けるよりずんと早くに、
「おととしゃまっ。」
 助けが来たぞと言わんばかり、その懐ろから小さなお手々がそちらへ懸命に伸びるのが。気持ちは判るが…少々憎そい。それへと応じてだろう、すぐ傍らへと腰を下ろしかけてた葉柱の、
「…だから。顔へと手渡すな、顔へ。」
 ふぎゅると音がしたかもというほどに、やわらかいお腹のところをぐいぐいと、こっちのお顔へ押し付けられた小さな坊やを受け取ってから。遅いお越しの黒の侍従、ぷんぷんと入れ替わりで立ってってしまったお館様の、しなやかな背中の行き先を目で追って。
「すまんかったの。坊が何かしおったか。」
 苛めていたのではない、説教をしていたと、そこは判っておっての問いかけへ、
「…知るか。」
 自分を振った坊やかそれとも、そんな坊やを先に愛しげに、両腕
かいなへ抱え込んだる葉柱の方へか。一体どちらへの嫉妬やら、見様によっては十分に可愛げたっぷりの解りやすさで、拗ねてしまったらしきお師匠様であり。あらまあ、これはちょこっと大変。
“本気で怒っては…いねぇよな?”
 子供の悪戯、聞き分けのなさくらいで、まさかに怒り心頭…ってこともなかろうが。一旦へそを曲げると、どんなささやかなことであれ、なかなか機嫌の直らぬ厄介な御仁。せっかく身が空いたからといそいそ駆け参じたのに、それはないだろと見やった背中は…やっぱり つんと素っ気なく。

  「………。」
  「………。」

 何だか変則的な睨めっこの我慢大会に突入したお二人だったが、
「………お。」
 不意に、つんつんと袂を引かれ。蛭魔が見下ろせば、いつの間に寄って来たやら、くうがじぃっとこっちを見上げてる。
「おやかまさま。」
 子供に邪険になっても、それこそ大人げないと。そこはぎりぎり分別が働いて、
「なんだ?」
 何とか感情を押さえてお返事を返せば。屈託のないお顔がふわっと破顔し、

  「おととさま、ちゅき?」
  「…………はい?」


   ……………………………………………。


 空気の止まったあばら家屋敷の大広間だったのは言うまでもなく。当事者以外の傍観者もあったこんな場で、はてさてお館様は何とお答えになったやら。何はともあれ、相変わらずに見せといて、相変わらずじゃあないところも少々増えたらしい蛭魔邸だったらしいですvv


  「………で? 答えは?」
  「知るかっっ!!////////
(←あっ)



   〜Fine〜 06.10.17.


  *新加入のおチビさんのその後をちょっとと思いまして。
   彼らの後日談でございますが、
   案外と幼子には形無しの皆様みたいでございます。
(苦笑)

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